合同批評会「羊歯とボート」に参加しました
3月3日のひな祭りの日に、原田彩加さんの『黄色いボート』と國森晴野さんの『いちまいの羊歯』の合同批評会に参加しました。
前半は『黄色いボート』『いちまいの羊歯』のそれぞれについて、3名のパネルディスカッション形式で、一冊を丁寧に読みすすめて行きました。
『黄色いボート』のパネルはまひる野の今井恵子さん、率の平岡直子さん、塔の花山周子さんでした。
原田さんの短歌は、きれいで読みやすくすっと心に入ってくる歌が多かったです。働く女性として共感の高い歌が多く、3名のパネリストの持つ感覚が比較的近いように思えました。表題の歌をどう読むかについては意見がいろいろと出ました。
『いちまいの羊歯』のパネルはかばんの佐藤弓生さん、短歌人の内山晶太さん、pool ・[sai] の石川美南さんでした。
國森さんの歌は、言葉の持つモチーフに乗れるかどうかで大きく読みが分かれるのかなと感じました。専門用語をもとの意味と比べたり、身体のイメージを擬人化していたり、概念がそのまま比喩になっていたりと、きちんと読もうとすると読みきれないというのは言われて納得でした。
後半は6名のパネリストが、お互いの作品についての評を述べたり、使われる語彙の相似性など東直子教室の特徴などが指摘され、時間があっという間に流れていく感じでした。
会場からの発言、監修者のあいさつ、著者お二方の感謝と抱負が述べられ、あたたかい空気につつまれた、居心地の良い時間を過ごすことができました。
東さんのもとに集まっている方々のホスピタリティの高さに誘われるままに懇親会と3次会にまで参加してしまいましたが、作者の持つ文体と一首の持つフォルムの違いなどパネルディスカッションで聞ききれなかった話や、結社・同人・カルチャーセンターの違いなどをたくさん話すことができました。
楽しい時間をありがとうございました。
無いものは無いとせかいに言うために指はしずかに培地を注ぐ
終わらせたこころをひとつD列の鳥卵標本箱におさめる
切りすぎた前髪のまま追いかけるわたしは雨のはじまりに立つ
/國森晴野『いちまいの羊歯』
嫌わずにいてくれたことありがとう首都高速のきれいなループ
岡山発南風5号ふるさとの空の青さが近づいてくる
庭中の花の名前を知っている祖母のつまさきから花が咲く
/原田彩加『黄色いボート』
短歌人2017年6月号に『黄色いボート』の書評を書きました。