染野太朗×花山周子トークショー(書肆侃侃房フェア記念)に参加しました(2)
10月1日の夕方に双子のライオン堂で開催された、染野太朗さんと花山周子さんのトークショーに参加しました。
(前回の記事はこちらから)
染野太朗×花山周子トークショー(書肆侃侃房フェア記念)に参加しました(1) - 太田青磁の日記
続いて、染野太朗さんの選です。
こぬひと|を---
まつほの|うらの
ゆうなぎ|に---
やくや|もしおの
みもこが|れつつ
掛詞、歌枕、縁語、序詞、ふたたび掛詞とレトリックをふんだんに盛りこんだ定家自選のお気に入りの一首。隙のない韻律。
その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな
/与謝野晶子『みだれ髪』
そのこはたち|----
くしに|ながるる
くろかみ|の---
おごりの|はるに
なりに|けるかな
その子とは自分のことらしい。初句六音は七音よりインパクトがある、という花山さんの発言はとても頷けるものでした。七音あると、4+3なり3+4なりで間が取れるのですが、六音は一気に畳みかけるような印象です。
形容詞過去教へむとルーシーに「さびしかつた」と二度言はせたり
/大口玲子『海量』
けいよう|し---
かこおし|えんと
るうしい|に---
さびし|かったと
にどいわ|せたり
この日のハイライトと言っていいくらい白熱した一首。作者情報をどこまで読みの考慮に入れるべきか迷う。多くの形容詞から「さびしい」という言葉を選んだところがいい。
思い出のひとつのようでそのままにしておく麦わら帽子のへこみ
/俵万智『サラダ記念日』
おもいで|の---
ひとつの|ようで
そのまま|に---
しておく|むぎわら
ぼうしの|へこみ
30年経っても高校生に愛唱される短歌とのことです。四句の字余りと句またがりが読者の心にフックを掛けるのでしょうか。
海に来れば海の向こうに恋人がいるようにみな海を見ている
/五島諭『緑の祠』
うみにくれ|ば---
うみの|むこうに
こいびと|が---
いるよう|にみな
うみを|みている
そして、今の高校生に訴求する歌。順接確定条件の「ば」が規定する世界。海が3回あるが「み」は5回繰り返される。
こんくりいと|----
ぜんぶ|はがして
つちに|する--
つちを|たがやす
そして|たねをまく
特集「テロ等準備罪を詠む」より。初句は畳みかけるように、結句はゆったりとおさめる。
ひとりで読んでいたらなかなか気がつかないことにも、すっと手を差し伸べてくれて歌のよいところを伝えてくれるような時間でした。
染野太朗さん、花山周子さん、素敵な時間をありがとうございました。