染野太朗×花山周子トークショー(書肆侃侃房フェア記念)に参加しました(1)
10月1日の夕方に双子のライオン堂で開催された、染野太朗さんと花山周子さんのトークショーに参加しました。
15名程度のわりとアットホームな空間に、染野さんと花山さんがそれぞれの10首選を持ち寄り、お互いに語り合うというとても楽しいイベントでした。
10首を全部やるよりは、絞ってやりましょうということで和歌・近代短歌・現代短歌を網羅しつつ5、6首を選んで自由に読みを語っていただきました。
染野さんと花山さんの対談はとても面白くて、いろいろと分かりやすく説明してくださったのですが、でもやっぱりわからないこともたくさんありました。わかった気になって帰ってくるよりは、レジュメに載っていた歌が収録されている歌集や連作を読んでみて、感じることを大事にしていこうかと思います。
というわけで、取り上げられた歌をリズムを中心に読み直してみました。
まずは、花山周子さんの選から
君が代は千代に八千代にさざれ石の巌となりて苔のむすまで
/詠み人知らず『古今和歌集』(※わが君は)
まず、国歌を縦書きで見たのがはじめてかもしれないです。
私が君が代を切って読むとするとこんな感じになります。
きみがよ|は---
ちよに|やちよに
さざれいし|の---
いわおと|なりて
こけの|むすまで
さざれいしは5連符のような感じで早口になります。
この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば
/藤原道長『小右記』
このよを|ば---
わがよとぞ|おもふ
もちづき|の---
かけたる|ことも
なしと|おもへば
このくらい突き抜けるとすがすがしい。いい気分になりたいときに思い返そうと思います。二句の強調。
さようならいつかおしっこした花壇さようなら息継ぎをしないクロール
/山﨑聡子『手のひらの花火』
さような|ら---
いつか|おしっこ
したかだ|ん---
さようなら|いきつぎを
しない|クロール
「さようなら」のリフレインが四句の字余りを感じさせず急ぐことなく読ませる。
さかみちを全速力でかけおりてうちについたら幕府をひらく
/望月勇治郎『あそこ』
さかみち|を---
ぜんそく|りょくで
かけおり|て---
うちに|ついたら
ばくふを|ひらく
濁音のある強い言葉だけが漢字で表記されていて、清音のことばはすべて開かれている。戦場は坂の上、政治は坂の下か。
きみの頬テレビみたいね薄明の20世紀の思い出話
/平岡直子「たべるのがおそい」vol.1
きみのほ|ほ---
テレビ|みたいね
はくめい|の---
にじゅっ|せいきの
おもいで|ばなし
きみ、頬、薄明、20世紀、思い出話という名詞が並ぶ。薄明のは下の句に掛かるのか、テレビに掛かるのか。
背と腹にカイロを貼りて校門を目指すことあり とても寒くて
/染野太朗『人魚』
せとはら|に---
かいろを|はりて
こうもん|を---
めざす|ことあり
とても|さむくて
主体の動作を外側から描写しているが、結句で突然内面の感覚が出てくる。一字空けに十分時間を取って読みたい。
(続きます)