第1回「現代の歌人を読む会」を開催しました(前編:永田紅さん)
こんにちは、短歌人の太田青磁です。
開催から少し日が開いてしまいましたが、年末の12月26日に第1回「現代の歌人を読む会」を開催しました。
小高賢さんの『現代の歌人140』の読書会をやりたいと思いインターネットで呼びかけたところ、興味を持ってくださった方が複数いらして開催にこぎつけることができました。
まずは、永田紅さんから。
ひとり3首くらいずつ選んでもらって、順番に一首ずつ読んでもらいました。その後、同じ歌を選んだ方や、いいなと思ってくれた方に話をつなげていく感じで、読みあいました。
当日、上がった歌からいくつか。
ああ君が遠いよ月夜 下敷きを挟んだままのノート硬くて
遠いよ月夜と韻を踏んだ句切れが気持ちよく響く。距離感を感じさせる上の句から一転して、目の前にあるノートへと視点の飛躍がいい。ああ、まま、のの、といった重なりもユニーク。
あらわなる肘より先を差し入れてあなたの無菌操作うつくし
研究室のクリーンベンチに向かって、白衣の袖をまくって実験に集中している客体像がイメージできる。身体の一部分を切り取ることで「うつくし」がよりリアルに伝わってくる。
試験管のアルミの蓋をぶちまけて じゃん・ばるじゃんと洗う週末
『ああ無常(レ・ミゼラブル)』の主人公をオノマトペとして借景しているのは、実験がうまくいかなかったのかもしれない。アルミの蓋は滅菌用なのだろう。週末を実験に費やす主体の感情が音として伝わってくるのが面白い。
疎林には光の逃げ場なきゆえにまぶしきものがぶつかり合えり
疎林という名詞がくっきりと浮かび上がる。木が少ないからこそ、差し込む光や木の肌を反射する光が視覚的に感じられる。なきゆえに、という硬めの表現も疎林のイメージと合っているのではないか。
理系の研究者の歌を実験の観点から説明してくれる方がいたり、文系の方が文学作品を解説してくれたりと読書会ならではの、幅の広い読みができました。
ひとりで読んでいると、自分と違う立場の歌や知らない単語のある歌は読み過ごしてしまいがちですが、様々なバックグラウンドを持つ方々と読みを共有できたのはとても楽しい時間でした。
今月も1/23(土)13:00〜16:00に第2回「現代の歌人を読む会」を開催します。
今回のテーマは横山未来子さんと大松達知さんです。
事前の準備は一切不要ですので、歌を読んで思ったり感じたりしたことを、なごやかにお話できたらと思っています。
↓申込はこちらから
https://mailform.mface.jp/frms/seijiota/ou8ljzze9mc7
どうぞよろしくお願いいたします。
- 作者: 小高賢
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