太田青磁の日記

There's no 'if' in life… こんにちは、短歌人の太田青磁です。

短歌人2019年1月号

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こんにちは、短歌人の太田青磁です。
今年最初の月例作品です。

ハロウィーン明けたらやたら光りだすそれぞれの駅のイルミネーション
外苑に等間隔にならびたる銀杏幾本かは黄を帯びて
青山に霊園ありてたまさかなれど高祖父の墓参りたり
みんな飲んでるビールをぐっとがまんして日曜特訓の子を出待ちする
サドルの低い子の自転車に子を載せて坂道のぼり一気にくだる
勝どき橋をわたる都バスの右窓に東京タワーが見え隠れする

 

11月号の作品月評で藤原龍一郎さんに一首取り上げていただきました。

モニターの石原さとみで涼をとる乗車率200%の朝

 

最近の電車はドアの上などにモニター画面が設置されていて、さまざまな動画が流れている。好きな女優の笑顔が見られれば、満員電車の大混雑も耐えられるということか。単に満員ではなく「乗車率200%」という表現にリアリティがある。

 

そして、Selectionでも小野澤繁雄さんに引いていただきました。

小学生ですら暗記してくるスピーチを読むしかできない人でいいのか

 

夏の歌会に出した歌が、秋の号に掲載されて、冬になって評をもらうのはうれしいですね。
感想などありましたらお聞かせいただけるとうれしいです。

 

身辺雑記(1/1〜1/6)

1/1(火)

あけましておめでとうございます。
子の受験を控えているためか、例年よりも年末年始という感じがあまりしない。

お雑煮を食べたあと、妻は実家に行くとのことで、子の書き初めにつきあう。(いいやつを選ぶだけ)

模試やテキストの間違えた問題の復習をする。問題文をしっかり読む、図を描く、小さい数で試すなどアドバイスらしきものをしてみる。

たなくじは「大たな吉」。オオタが入るとちょっとうれしい。

何となくけだるいままに一日を過ごしはやめに寝る。

 

1/2(水)

1月2日といえば箱根駅伝なわけですが、わたしの母校が出場するわけでもなく、高校の地元の通学路がばっちりコースと重なっているので、毎年楽しみにしているのです。

2区(二句ではない)の難所と言われる坂の上に母校(高校)があるのですが、そこから戸塚中継所(当時住んでいたところの近く)までがほぼ通学路でした。

今年は、青山がぶっちぎって完全優勝かなと思っていたので、混戦のレースは復路も楽しみ。早稲田はシード確保できるとよいのですが。

子どもは今日から塾なので、妻と「ボヘミアン・ラプソディ」を観にいく。

妻の影響でQueenもわりと聴いていたのですが、劇場で聴くとインパクトがありますね。いろいろと考えさせられることが多い映画でした(妻は号泣していました)。

夕食は寿司。新年なので気分をあげていきたい。

 

1/3(木)

復路も見ごたえのあるレースでした。東海大学の皆さまおめでとうございます。2区と5区が上り坂のイメージがあると思うのですが、8区の上りも結構大変なのです。早稲田は予選会でした。

今年の三が日は塾の送り迎えと映画くらいで(自転車か徒歩)のんべんだらりと。

佐藤優『獄中記』を読む。自身のベースはキリスト教というところに強く感銘を受ける。大事なことは聖書にかいてあるのだ。

社交的ではないのに社交をしすぎているのが大変なので、今年は内省の時間を多めに取りたい。

 

1/4(金)

仕事始めです。年末にがんばった(当社比)ので、年始は比較的穏やかにスタートです。

飛び石的な出勤は何となく気が重い。まあ、いればいい感じだと思うので定時であがる。

八重洲ブックセンターに寄り、大辻さんの『佐藤佐太郎』、角川ソフィア文庫の『万葉集』、『山頭火句集』を手に入れる。

話題の新刊を追うのは、はっきりと無理なのであら熱が取れた頃にもう一度検討する作戦でいく。

 

1/5(土)

連休なのか普通の土日なのか分からない感覚。通院していた病院が休みなのでおとなしくしている。

日々のクオリアは染野さんと平岡さんから、花山周子さんと生沼さんにバトンタッチ。信頼している方の評を読めるのは幸せなことなので楽しみ。

 

1/6(日)

著作権というか、引用と転載の違いなどを考えはじめると、なかなかうまく線が引けない。短歌は引用はすなわち全文引用というところもなかなか奥が深い。

もともと吹奏楽とかオーケストラにいたので、著作権が残っている曲をやるときはそれなりに配慮をしていたというか、わりとこういう場合はいくらとか決まっていた感覚があって、世界が変わるとむずかしい。

表現形態によるそれぞれの世界のいわゆる作法的なものとか、死後の著作権が延長されるのは誰のためなんだろうとか。

法律の専門の方の意見やいろいろな媒体に寄稿されている方のポリシーなどを踏まえつつ、できるだけ積極的に良いものを良いと言っていきたい。

もちろんすべての人の意に添うことはできないので、権利のある方からの意思は尊重します。

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日記らしきものを綴るのは何百年ぶりなのですが、なんとなくはじめてみます。

新世代がいま届けたい現代短歌を読む①

短歌ムック「ねむらない樹」の特集「新世代がいま届けたい現代短歌100」を読みます。四人の新世代歌人の選んだ歌を追ってみます。まずは、大森静佳さんの選歌した歌から読みはじめます。

 

ああなにをそんなに怒っているんだよ透明な巣の中を見ただけ
/盛田志保子『木曜日』

ああなにを
そんなにおこって
いるんだよ
とうめいなすの
なかをみただけ

何に怒るかはその人の本質的な価値を現しているのかもしれない。透明な巣は見るつもりがなかったのに、見てしまったものを想起させる。

 

あなたが退くとふゆのをはりの水が見えるあなたがずつとながめてた水
/魚村晋太郎『花柄』(退:ど)

あなたがどくと
ふゆのおわりの
みずがみえる
あなたがずっと
ながめてたみず

あなたが動くことで見えるあなたが見ていた世界を、あなたと水のリフレインと幻想的なリズムで迫ってくる。

 

あなただけ方舟に乗せられたなら何度も何度も手を振るからね
/馬場めぐみ 短歌研究2011年10月号

あなただけ
はこぶねにのせ
-られたなら
なんどもなんども
てをふるからね

ノアの方舟だろうか。受け入れがたい別れに対してもできうる限りの意思を表明したいという強さがリフレインに伝わってくる。

 

イルカがとぶイルカがおちる何も言ってないのにきみが「ん?」と振り向く
/初谷むい『花は泡そこにいたって会いたいよ』

いるかがとぶ
いるかがおちる
なにもいって
ないのにきみが
ん とふりむく

とぶイルカ、おちるイルカ、主体、きみとカメラのアングルが切り替わっていくような感覚が楽しい。

 

おもうからあるのだそこにわたくしはいないいないばあこれが顔だよ
/望月裕二郎『あそこ』

おもうから
あるのだそこに
わたくしは
いないいないばあ
これがかおだよ

おもうからある、わたくしはいない、とデカルトを思わせる深淵なフレーズからの下句に顔の持つ個体識別力を揺さぶられる。

 

短歌ムック ねむらない樹 vol.1

短歌ムック ねむらない樹 vol.1

 

 

2018年11月短歌人東京歌会に参加しました。

こんにちは、短歌人の太田青磁です。

11月25日(日)に短歌人東京歌会に参加しました。この日は文学フリマ東京と日程が重なっていたので、後半のミニシンポジウムだけでいいかなと思っていたのですが、文フリ会場で会った方から詠草少なめらしい、ということを聞いてあわてて駆け込みで参加しました。

出した歌はめずらしく小池さんからこれでいいんじゃない、という評をもらえたので遅れてでも参加してよかったです。(少し前に月詠に出した歌を推敲しました)

後半のミニシンポジウムは佐藤佐太郎の歌を三名のパネリストがいろいろな切り口で紹介してくれました。ここから盛り上がるかな、というところで子どもの塾が終わったと連絡があって、残念ながら会場発言は聞くことができませんでした。

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ミニシンポジウム(佐藤佐太郎)

佐太郎はまだまだ読めていないので、ゆっくりと読んでいきたいです。

文フリの戦利品はこんな感じです。

・近藤芳美クリアファイル
・短歌ホリック3号
・稀風社の経験
・六花3号
・とりま
・ぬばたま3号
・Library2号
・砂糖水
・みたたんか3号
・スパルタの本(句集)
・手稿録

です。予算の都合上断念した書籍・雑誌はゆるく追いかけていきます。

短歌人2018年12月号

こんにちは、短歌人の太田青磁です。
今月の月詠です。

すっぱりと斜め四十五度に切られた月をしばし見ている

台風一過の運河のみずは鈍くひかり水羊羹のようにゆれおり

夕空にまだらに浮かぶうろこ雲 こわいと言われればこわい気がする

自習室が閉まる十時はサイゼリヤにたびびと算をならんで解きぬ

先生の名前がふたつ並んでる国語便覧「あきのくさはな」 

いよいよ年末が近づいてきました。このところ思うように作品が出せず苦しんでいるのですが、ここはほかの人も通る道なのだろうなと感じています。

感想などお聞かせいただけるとうれしいです。

短歌人2018年11月号

こんにちは、短歌人の太田青磁です。
今月の月詠です。

モニターの石原さとみで涼をとる乗車率200%の朝
鈍行を乗りついでゆく乗るごとに車両みじかく町はのどかに
雨雲レーダー真紅に染まるセルにいて折りたたみ傘はただの棒なり
マヨネーズ多めで頼む平和園の冷やし中華で夏がはじまる
中華鍋を軽々と振る背筋をビール片手にながめていたり
小学生ですら暗記してくるスピーチを読むしかできない人でいいのか 

マッチ擦るつかのまの海に霧深し身捨つるほどの祖国はありや
寺山修司『空には本』

「特集*前衛短歌は勝ったか負けたか」に、寺山修司の歌と短いエッセイを寄せています。若き日の短歌との出会いについて書きました。この歌を当時はうまく読み解けなかったのですが、格好いい短歌がいい短歌なのかという命題は持ち続けていたいものです。

感想などお聞かせいただけるとうれしいです。

短歌人2018年10月号

こんにちは、短歌人の太田青磁です。

今月の月詠です。

明け方にあるいた川沿いの道をもう一度あるく夕まぐれ

この夏はなぜかやたらとぼんやりしていて、全国集会に出した一首を送るのが精いっぱいでした。どこの川なのかは分かる人には分かるかもしれません。

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鳴りやまぬ電話のベルを聞いていつ 誰も映らぬモニターの中に

Selectionでも一首引いていただきました。ありがとうございます。

感想など聞かせていただけるとうれしいです。

 

短歌人2018年9月号

こんにちは、短歌人の太田青磁です。

今月の月詠です。

冷麺を食みつつ歌集の話せり盛岡に暮らす高校生と
不来方のお城へ向かう朝まだき吸われし空は雲に隠れて
サンビルに四人が集う 文フリは同い年に逢うための旅
旅先に当たりの喫茶店あれば再び訪なうのが習いなり
山に囲まれ育つ人には山々が絶対的な安心とわかる
朝に夕に川沿いを歩む このペースで暮らせる街は住みたくなる街

6月に文学フリマ岩手に行きました。今年に入ってから文フリの歌ばっかりですが、感想などお聞かせいただけるとうれしいです。

 

2018年7月短歌人東京歌会とビブリオバトルに参加しました。

こんにちは、短歌人の太田青磁です。

池袋のいつもの会場が工事中につき、芸術劇場のリハ室を借りて歌会です。
こういう部屋は、オーケストラの練習で使っていたことが多く、セッティングにも何だか張り切ってしまうのですが、研究会のプレゼンターの役割もあって体力温存で望みます。

この日も50首を越える詠草が集まり、一首一首の時間は短いものの、密度の濃い批評が飛び交う感じでした。発言は結構手をあげたのですが、読みきれない歌もあって、いろいろな人の話を聞くのが大事だなと思っています。

歌会のあとの研究会では、「短歌ビブリオバトル」というおススメ本を紹介するプレゼンバトルに参加しました。川田さん、藤原さん、長谷川さん、浪江さんと5人で5分ずつおススメ本について紹介したのち、会場からの質問に答え、全員が紹介し終わってから、投票で結果が決まります。
一冊目は稀風社さんの『誰にもわからない短歌入門』(2015年)で臨みました。一番手だったので緊張しましたが、何とか時間内に話をすることができました。

kifusha.hatenablog.com


二冊目はユキノ進さんの『冒険者たち』(2018年書肆侃侃房)です。版元や新鋭短歌シリーズなどのレーベルを合わせて紹介したので、歌集の紹介が十分に話しつくせなかった感が残りました。

冒険者たち (新鋭短歌シリーズ38)

冒険者たち (新鋭短歌シリーズ38)

 


結果は2冊とも藤原さんが勝ったのですが、今回は勝つことよりも良い本を紹介することができたので個人的には満足です。

歌会、研究会に続き懇親会にも参加しました。見学にきてくださった方や、プレゼンバトルに参加した方と話ができてよい時間でした。

全国夏季集会のため8月は東京歌会は休会となりますが、勉強会もありますので、見学希望の方はどうぞお声掛けください。

ご参加くださった皆さま、どうもありがとうございました。

短歌人2018年8月号

こんにちは、短歌人の太田青磁です。

今月の月詠です。

御殿山の坂をのぼりて現代美術コレクションに浸るひととき
洋館の階段ゆるく曲線を描く手すりの手ざわり滑らか
前後左右を白きタイルに囲まれてわれの思考は四角くなりぬ
鳴りやまぬ電話のベルを聞いていつ 誰も映らぬモニターの中に
砂で描かれた共和国旗と太極旗わずか崩れて混ざりつつあり
赤き服の案内嬢ら折り伏せるうごく歩道は闇へと続く

原美術館を訪れたときに作った吟行詠です。感想などお聞かせいただけるとうれしいです。