太田青磁の日記

There's no 'if' in life… こんにちは、短歌人の太田青磁です。

『冒険者たち』刊行記念トークイベントに参加しました

こんにちは、太田青磁です。

5月19日(土)に赤坂の双子のライオン堂で開催された「ユキノ進『冒険者たち』刊行記念トークイベント」に参加しました。テーブルを挟んでパネリストと10名ほどの参加者が打ち合わせのように輪になって並ぶアットホームな感じの会場でした。

 

はじめにユキノ進さんの短歌との出会いや読者としてどんな歌人の作品を読んできたか、どんなきっかけで自分も作者となっていったのか、短歌とどのように関わって来たのかを、寺井龍哉さんがインタビューをする形式で対談が進んでいきました。読者としての時間が長かったということと、ほかのジャンルの表現者と出会うなかで自分が表現をするなら短歌だ、そして自分の表現の場は自分の行動力で作ってきたということが印象的でした。

 

そしてメインテーマは「短歌が切り取る今の社会」というタイトルで、以下の項目のグラフと短歌が並ぶレジュメが渡されました。まるで社会学のゼミに参加しているような気分でした。

非正規雇用者の割合の推移
②賃金指数の推移(名目・実質)
③人件費と企業の取り分の推移
④時間外労働指数の推移
精神疾患に係る労災の支給件数の推移
⑥人事評価におけるリーダー項目
⑦大学・大学院卒の正規職員率(男性・女性)
⑧防人歌
⑨米国の所得格差の推移(トップ10分位の占める比率)

どのグラフにも短歌にも、社会に対する問題意識があふれていて、それを冷静に見つめながら情熱のある作品につなげていくというスタイルは目を見開かされる思いでした。

 

こういうグラフをみるたびにやるせなさを感じてしまい冷静になれなかったり、自分自身の個人的な体験を思い返して苦しくなってしまうテーマもあったのですが、防人歌のように歌にすることで複雑な感情を慰めることができるのだと気がつき、参加してよかったなと感じました。

 

わたしは社会詠を作ろうとすると、つい言いたいことを言いすぎてしまうことが多いのですが、対談の最後に寺井さんが「言いたいことを言わずに読者に委ねるのがよい社会詠なのではないか」と述べていて、もっと読者を信頼して歌に向きあっていきたいなと感じました。

 

一首で読ませる短歌ももちろん価値があるのだけれど、連作という形式を取ることで自分の表現を確立してきたというユキノさんのスタイルはとても格好良くて、わたしも地力をつけて長い連作にチャレンジしてみようかなという気持ちにもなりました。

 

ユキノ進さん、寺井龍哉さん、どうもありがとうございました。

冒険者たち (新鋭短歌シリーズ38)

冒険者たち (新鋭短歌シリーズ38)