太田青磁の日記

There's no 'if' in life… こんにちは、短歌人の太田青磁です。

前川さんと鳥居さんの話を聞きました

こんにちは、短歌人の太田青磁です。
3/18に専修大学で開催された、前文部事務次官の前川喜平さんと歌人の鳥居さんのトークイベントに参加しました。

最初に鳥居さんの歌がいくつか紹介されたのち、鳥居さんの話がありました。鳥居さんがなぜセーラー服を着ているのか、どうして短歌を作っているのか、ようやく手に入れた夜間中学生活で直面した課題を聞かせてくれました。

どうして発展途上国の児童や生徒が学校に通えるように基金をつくっているのに、自国の普通教育を受けられなかった人に対して支援をしないのだという問いは権利を当然のように受けている人間の配慮の足りなさを指摘するものでした。また、現状の夜間中学の生徒はほとんどが外国人であって、実態は語学教室であり、学習をやり直したいというニーズに答えていないという事実も教えてくれました。

続いて前川さんの話では、行政は前例踏襲を基本としているので、行政が単独で何かを変えるのがむずかしいと聞きました。また、実際の法案が通ったのち、国・都道府県・市町村のそれぞれの行政がどのように動いているのか、また、超党派の議員が協力して法案を通すという、与野党の対立だけではない政治の世界のダイナミズムを詳しく説明してくれました。

クロストークでは、前川さんが歌舞伎町で実際に会った人の話からプロレスの話、そして万葉集へと至るエキサイティングな対談でした。鳥居さんの質問には前川さんもびっくりしていましたが、誹謗中傷に値する事実がなかったことをメディアの前で証言する機会を提供しようとしていたと気がついてじんわりとしました。

鳥居さんは、現実を受け入れてサバイブしていくために必要なことは孤独を恐れないということを教えてくれました。高校や大学への進学意欲があって、教育についても学びたいと言っているのが心に残りました。前川さんは「義務教育」ではなく「普通教育をあまねく国民が受ける権利を国が保障する」べきだという持論と、他者の意見を悪意と取るのではなく意見の異なる人の話もまず聞いて、それでも話が違う人とはうまく距離をとるという、誠実で懐の広さを感じました。

前川さんの愛読書が、斎藤茂吉の『万葉秀歌』ということを聞いてとても親近感がわきました。また、基本的人権が奪われた人を社会がどのようにすくい上げることができるのかという命題と、文学は生きる力となり得るのだという事実に、畏敬の念を感じました。

鳥居さん、前川さん、企画を立ててくださったみなさま、このイベントを教えてくださった岸原さんに感謝いたします。

キリンの子 鳥居歌集

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