推し歌人アンソロジー①(影響を受けた歌人編)
タイムラインに流れてきた、推し歌人アンソロジーの企画に合わせて、①影響を受けた歌人、②好きな歌人、③最近のイチ推し歌人をあげてみます。まずは影響を受けた歌人です。
砂浜のランチついに手つかずの卵サンドが気になっている
/俵万智『サラダ記念日』
「寒いね」と話かければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ
四万十に光の粒をまきながら川面をなでる風の手のひら
/同『風の手のひら』
優等生と呼ばれて長き年月をかっとばしたき一球がくる
/同『チョコレート革命』
焼き肉とグラタンが好きという少女よ私はあなたのお父さんが好き
自動販売機とばあさんのたばこ屋が自動販売機と自動販売機とばあさんに
/斉藤斎藤『渡辺のわたし』
雨の県道あるいてゆけばなんでしょうぶちまけられてこれはのり弁
宗教も文学も特に拾わない匙を医学が投げる夕暮れ
/同『人の道、死ぬと町』
静岡の長さに負けて三〇〇円コーヒーを買う行きも帰りも
二日後の河北新報朝刊の「生きてほしい。」ではじまる社説
つつましき花火打たれて照らさるる水のおもてにみづあふれをり
/小池光『バルサの翼』
廃駅をくさあぢさゐの花占めてただ歳月はまぶしかりけり
/同『廃駅』
佐野朋子のばかころしたろと思ひつつ教室へ行きしが佐野朋子をらず
/同『日々の思い出』
機械山羊に紙食はしむるたのしみや機械山羊とはシュレッダーなり
/同『草の庭』
経験は命題の意味をものがたりせず命題の真偽を教えくるるのみ
銀杏が傘にぼとぼと降つてきて夜道なり夜道なりどこまでも夜道
/同『静物』
疾風にみどりみだるれ若き日はやすらかに過ぐ思ひゐしより
/大辻隆弘『水廊』
ドリブルの音の絶えたる真昼間はふかぶかと夏を待つ体育館
青春はたとへば流れ解散のごときわびしき杯をかかげて
あけがたは耳さむく聴く雨だれのポル・ポトといふ名を持つをとこ
/同『抱擁韻』
受話器まだてのひらに重かりしころその漆黒は声に曇りき
紐育空爆之図の壮快よ、われらかく長くながく待ちゐき
/同『デプス』
次々に走り過ぎ行く自動車の運転する人みな前を向く
/奥村晃作『三齢幼虫』
不思議なり千の音符のただ一つ弾きちがへてもへんな音がす
/同『鴇色の足』
ボールペンはミツビシがよくミツビシのボールペン買ひに文房具店に行く
転倒の瞬間ダメかと思ったが打つべき箇所を打って立ち上がる
/同『ピシリと決まる』
権太坂完全舗装されたれどその道の持つ傾斜変わらず
/同『キケンの水位』
/同『スキーは板に乗ってるだけで』
サラダ記念日 (河出文庫―BUNGEI Collection)
- 作者: 俵万智
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