短歌人2017年10月号会員2欄(1)
短歌人2017年10月号会員2欄から
『富士日記』を読んで夜明けに家を出る車のトランク静かに閉めて
/柳橋真紀子
ドイツ館の屋根にドイツのまぼろしや俘虜が第九を歌いしところ
/福永文子
不機嫌な朝にはねらるるパスワード次はゆっくり八桁たたく
/円弘子
アンコールはチャイコフスキーのセレナーデ ティンパニ奏者鼻掻きており
/植松豊
ドヴュッシーとラヴェルの違ひ?音色の固さだよねえ ピアスが揺れる
/杉本玲子
終曲はバーンスタイン・メモリアル若者称えて総立ちとなる
/矢田敏子
木炭を消しつつかじる食パンに口の周りを黒くせし午後
/蒼あざみ
人間の眼をして嘆くゲルニカの牛の心を癒してやれぬ
/桃林聖一
左右の手がシマからシマへ火を運ぶ 原爆忌にもひまわりは燃え
/葉山健介
海水に身体を溶かしいつの日かあなたを濡らす雨になりたい
/鈴掛真