太田青磁の日記

There's no 'if' in life… こんにちは、短歌人の太田青磁です。

第11回現代の歌人を読む会を開催しました(谷岡亜紀さん、小塩卓哉さん)

こんにちは、短歌人の太田青磁です。

4月23日に第11回の現代の歌人を読む会を開催しました。参加者の入れ替わりもありつつ続けている読書会なのですが、今回は初参加の方が三名もいらして、どことなく始めたばかりの頃を思い出しつつ、楽しく歌を読みあいました。

今回の歌人は谷岡亜紀さんと小塩卓哉さんです。

まずは谷岡亜紀さん。

うるとらの父よ五月の水青き地球に僕は一人いるのに

火の粉のごときが肩に絶えまなく降り来る夜をおまえに帰る

砲声の止みて静もる世界史の花を抱えて待ち人は来る

一首目、初句「うるとらの」が枕詞や地球に掛かる序詞のようでおもしろい。宇宙から地球そして自分とダイナミックにクローズアップしてゆく。一人いるのには、その先が投げ出されているようでも、孤独をヒロイックに歌い過ぎではという意見もあった。

二首目、おまえに帰るというぶっきらぼうな表現が読みどころではないか。肩に降るというのも男性らしさが出ている。火の粉は実際に火花が散るような職場とも、無理難題が次々ときているようなイメージとも取れて読みが分かれた。

三首目、時間も空間もスケールの大きな一首。「静もる世界」から「静もる世界史」となることで、歴史が花に集約されている感じがある。平和を希求する言葉に花を持ってきたのはドラマチックであるが、わかりやすすぎるとも感じられた。

続いて、小塩卓哉さん

あああきのそのふところのふかくしてくちにふふめるままのほおずき

異郷より送られ来たる歌集読む生きた証として立つ一行詩

音のみが空から振ってくるときに子は飛行機の真似して走る 

一首目、すべてひらがなで書かれた優しい一首。「あ」「ふ」「ま」と同じ音が続いているのも、なつかしい景色を彷彿させる。ほおずきを口に含み音をたてるときの背景としてふところのふかい秋が広がりを見せている。

二首目、異郷とはどこなのか、歌集は何処から来たのだろうかと思いながら、解説を読むと「海を越えて移住した人々の短歌に、関心を持ち続けている」とあり、情景が浮かぶようになった。下の句は少し言い過ぎなのではないかとも感じる。

三首目、子どもへの目線があたたかな歌である。上の句は「振る」という表現が少しわかりにくいが、子にとっては「振る」として捉える音が、飛行機の真似をして走るという行為につながっているのがユニークである。

谷岡さんは世界や宇宙という大きなモチーフをロマンチックに描いているのに対して、小塩さんは平易な言葉で日常をスケッチしている印象を受けました。歌にとっての技巧の価値を考えさせらる会ともなりました。

 

次回は加藤治郎さんと米川千嘉子さんです。日程は少し空いてしまいますが、6月25日に開催を予定しています。

https://mailform.mface.jp/frms/seijiota/ou8ljzze9mc7

どうぞよろしくお願いいたします。

現代の歌人140

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